2025/11/21
ハインリッヒの法則は、有名な法則かもしれない。「1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある」という1:29:300の比率は、多くの人が一度は耳にしたことがあるだろう。
しかし、だからこそ難しさもある。聴衆の多くがすでに知っている内容を、どう語れば心に響くのか。ここでは、ハインリッヒの法則を挨拶に盛り込む際の具体的なアプローチを紹介する。
「知っている」と「意識している」の違いを問いかける
ハインリッヒの法則を挨拶で使う際、最もありがちな失敗は「1:29:300という比率があります」と説明して終わることである。聴衆はすでに知っている。知識として知っていることを繰り返されても、心には響かない。
効果的なのは、「知っている」と「意識している」の違いを問いかけることだ。たとえば、こう切り出す。
「ハインリッヒの法則、皆さんご存知だと思います。では、今日ここに来るまでの1週間で、皆さんは何回『ヒヤリ』としましたか?」
この問いかけによって、聴衆は自分自身の体験を振り返ることになる。法則を「知識」から「自分ごと」に変換させる効果がある。
「300」という数字の意味を実感させる
1:29:300の「300」という数字を、自社や現場の規模に置き換えて語ると、抽象的な法則が身近な現実として伝わる。
たとえば、「当社の協力会には約300名の作業員がいます。ハインリッヒの法則に当てはめれば、この中の誰か一人が重大事故に遭う前に、300回のヒヤリハットが起きているはずです」という語り方ができる。
あるいは、「昨年1年間で、皆さんの現場からヒヤリハット報告が○件ありました。ハインリッヒの法則でいえば、あと○件のヒヤリハットがあれば、重大事故が起きてもおかしくない計算です」と、実際の数字を使うことで説得力が増す。
ヒヤリハット報告を促すメッセージにつなげる
ハインリッヒの法則を語る最大の意義は、ヒヤリハットの段階で対策を打てば重大事故を防げるという希望を伝えることにある。
しかし現実には、ヒヤリハットの報告は上がりにくい。「恥ずかしい」「叱られる」「面倒くさい」という心理的なハードルがあるからだ。
挨拶では、この心理的ハードルに触れたうえで、報告することの価値を伝えると効果的である。「ヒヤリハットを報告してくれることは、恥ずかしいことではありません。むしろ、300分の1の段階で危険を教えてくれる、最も価値のある貢献です」というメッセージは、報告をためらっている作業員の背中を押すことができる。
語る際のポイント
ハインリッヒの法則を挨拶に盛り込む際は、以下の点を意識すると効果的である。
- 法則の説明に時間をかけすぎない(聴衆はすでに知っている前提で)
- 問いかけを入れて、聴衆に自分ごととして考えさせる
- 自社や現場の具体的な数字に置き換えて語る
- 「報告してくれてありがとう」という姿勢を示す
ハインリッヒの法則は、語り尽くされた感のある題材だからこそ、どう語るかで差がつく。「また同じ話か」と思わせるか、「そういう視点があったか」と思わせるか。その違いは、聴衆の日常の安全意識に確実に影響を与える。
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