2025/11/21
「ご安全に」は、建設現場や製造現場で広く使われている挨拶言葉である。朝のすれ違いざまに、作業の合間に、帰り際に。何気なく交わされるこの言葉を、安全大会の挨拶に盛り込むことで、その意味を改めて聴衆と共有することができる。
「ご安全に」の由来を語る
「ご安全に」の由来を知っている人は、実は多くない。この言葉の起源は、ドイツの炭鉱で使われていた「Glück auf(グリュック・アウフ)」という挨拶だとされている。直訳すれば「幸運を」だが、その真意は「無事に帰ってこい」という、危険な坑内作業に向かう仲間への願いだった。
日本では、1950年代に住友金属工業がこの挨拶を取り入れ、その後、鉄鋼業、製造業、建設業へと広がっていった。
挨拶でこの由来を紹介することで、「ご安全に」という言葉に込められた歴史と思いを伝えることができる。「この言葉は、100年以上前のドイツの炭鉱で生まれました。危険な坑道に降りていく仲間に、『無事に帰ってこい』という願いを込めて交わした言葉です。私たちが今日交わす『ご安全に』にも、同じ思いが込められています」という語り方は、聴衆に言葉の重みを実感させる。
「言っている」と「願っている」の違いを問う
「ご安全に」は、日常的に使われているがゆえに、形式的になりやすい。何も考えずに口にする挨拶になっていないだろうか。
挨拶では、「言っている」と「願っている」の違いを問いかけることができる。
「皆さんは今日、何回『ご安全に』と言いましたか?そのとき、本当に相手の安全を願っていましたか?」
この問いかけは、聴衆に自分自身の言動を振り返らせる。形式的に口にしていただけかもしれない、と気づかせることで、明日からの「ご安全に」に心を込めるきっかけを作ることができる。
挨拶の最後を「ご安全に」で締める
安全大会の挨拶の締めくくりとして、「ご安全に」を使う方法もある。ただし、単に「ご安全に」と言って終わるだけでは、ありきたりな印象になる。
効果的なのは、言葉の意味を語ったうえで、その言葉で締めくくることだ。
「『ご安全に』という言葉には、『無事に帰ってきてほしい』という願いが込められています。今日、ここから現場に戻る皆さん一人ひとりに、私からその願いを込めて伝えさせてください。ご安全に」
このように、言葉の意味を伝えたうえで締めくくることで、形式的な挨拶ではなく、本気の願いとして聴衆に届けることができる。
語る際のポイント
「ご安全に」を挨拶に盛り込む際は、以下の点を意識すると効果的である。
- 由来を紹介することで、言葉の重みを伝える
- 形式的に使っていないかを問いかけ、自己認識を促す
- 言葉の意味を語ったうえで、挨拶の締めに使う
- 「お互いの安全を願い合う文化」として語る
「ご安全に」は、日本の産業現場が育んできた安全文化の象徴である。この言葉を改めて取り上げることで、単なる挨拶言葉を、安全への意識を高め合うコミュニケーションへと昇華させることができる。